スポーツ強化、鈴木大地さんのもっともな発言

今日は、私が勤務する国立スポーツ科学センター(JISS)の業績評価委員会がありました。

JISSが行っている様々な事業(スポーツ医・科学支援事業、マルチサポート事業、スポーツ医・科学研究事業、スポーツ診療事業、スポーツ情報事業など)に関して、外部の識者の先生たちで構成される業績評価委員会の前でプレゼンテーションを行い、ご意見をいただき、質疑します。JISSの事業の質を高めるために年に一度行われるものです。

時間をかけて業績評価委員会のメンバーの先生方から建設的な意見をいただき、きちんと評価していただきました。

現在JISSの目玉でもあるロンドンオリンピックに向けて多角的な面からサポートを行う「マルチサポート事業」、昨年の広州アジア大会の際には選手村から15分の場所に村外サポート拠点として「マルチ・サポートハウス」を設置しました。そこでは、選手たちの「リカバリー」という観点から、リカバリーミール(日本食)を提供したり、コンディショニングの観点から、メディカルルームやリラックススペースなども設置、ゲームの分析サポート機能や情報戦略機能も備え、同様の手厚いサポート体制をロンドンオリンピックでも計画しています。

プレゼンテーションとあと、委員会のメンバーの一人であるソウルオリンピック競泳の金メダリストの鈴木大地さんが言いました。

「いやー、素晴らしい手厚いサポート体制ですねえ。でも、この体制はいつまで続けられますか?選手たちがいつでもこんな素晴らしいサポートをしてもらうことに慣れてしまうの問題ですかねえ」

確かに、この事業は予算的にはロンドンオリンピックまで、そのあと永遠に続く保証はない。ご自身の現役時代に比べ格段に良くなったサポート体制は素晴らしいと感じながら、鈴木さんが言いたかったのは、「手厚いサポートも大事だけれど、どんな劣悪な環境やサポート状況でも普段通り戦えるたくましさもなければ世界では勝てないよ」ということです。

その通りだと感じました。勝つためには少しでも良い環境を作ってあげることも大事、同時にどんな環境でも苦にせずに戦えるたくましい選手を育てることも大事です。

日本のスポーツ強化にあたっては、目先の短期的な戦略だけでなく、同時に長期的な戦略も頭に入れて、「たくましい選手を育てる」という観点を忘れちゃだめだよな、と感じた意義のある業績評価委員会でした。