月別アーカイブ: 2011年6月

高齢者の熱中症対策について教えてください!

こんにちは、セクレターKです。気温の差が激しい日々が続いておりますが、みなさま、体調はいかがでしょうか?さて、私ごとで大変恐縮ですが、先月より肉離れを患い、整骨院に日々通っておりました。

その際に、来院されている多くの高齢者の方々の会話を耳にしていると、天気と気温の変化にあわせた体温調節の話題がとても多く、それぞれに苦労されているのだと気がつきました。

気温が下がると「炬燵から出られない」「靴下を2枚はいているけど、ズボン下も欠かせない」。暑くなると「寝つけない……」「寝苦しい」などなど、悩みを抱えている方が想像以上にいらっしゃいました。

そこで小松先生に、今年の夏の熱中症対策の中でも、とくに高齢者の方についていくつか質問させていただきました。

Q:なぜ年をとると体温調節がむずかしくなるのですか?

A:さまざまな要因があります。一つには、高齢者が脱水になりやすいのは、若年者に比べて「細胞内液量」が著しく減少しているためです。体の水分が失われると、まず「細胞外液」が減少し、それを「細胞内液」が補充して循環血液量を維持します。もともと「細胞内液量」が少ないので脱水になりやすいです。そのほか、のどの渇きを感じにくくなる、暑さを感じにくくなるなども関係しています。もちろん腎機能の低下や心機能の低下も脱水が起きた時に重症になりやすい原因。

Q:水分が不足するとどうなりますか?

A:水分が不足するとまずは「脱水」になります。脱水をすぐに改善しないと、運動能力が低下し、体温が上がり、熱中症に結びつく危険性が高まります。

Q:水はどの位飲めばよいですか?お茶でもよいですか?

A:摂取する水分量に関しては、暑さ、湿度、運動量などで異なるので、一概には言えません。ただ、心臓や腎臓などの病気でない限り、「とりすぎて悪いことはない」です。また、汗をかくのが嫌でとらない人がいますがこれは間違い。汗が出ないことはすでに脱水なのです。スポーツ時の水分摂取量の目安は、運動の強度に寄りますが、体協のホームページに表が出ていますので参考にしてください。麦茶や緑茶でもよいけれど、適宜「塩分」も必ず取ることが大切。その点スポーツドリンクが便利です。

「健康な人は水をとりすぎて悪いことは基本的にはないので、積極的に水分をとって欲しい」という小松先生のお話でした。

猛暑、そして節電対策と、課題が多い今年の夏ですが、たっぷりの水分、そして適宜「塩分」を取ることで、のりきっていきましょう!

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ドーピング違反と外国製サプリメント

昨日残念なニュースがありました。

レスリングの北村克哉選手が4月の全日本選抜選手権後のドーピング検査で禁止物質であるドロスタノロンが検出され、日本アンチドーピング機構(JADA)から2年間の資格停止処分が科されたと発表されました。

どうやら本人は意識なく摂取した外国製のサプリメントにこの筋肉増強剤が含まれていたようです。北村選手はとてもまじめな選手です。ドーピング行為をしようと思って摂取したわけではない事は間違いないでしょう。しかし、ドーピング行為を行おうとしたか否かにかかわらず、尿から禁止物質が検出された場合にはドーピング違反になり制裁が科されます。それが国際的なルールなのです。

ロンドンオリンピックを目指していた北村選手も無念でしょう。同時に、選手を身近でサポートする私にとっても、そうなる前に何とかしてあげられなかったか、と責任を感じてしまいます。

選手たちには普段から、薬やサプリメントを摂取する際にはドーピング検査で問題がないものかどうか細心の注意を払うように話をしています。必ず成分表示を確認すること、わからなかったら我々に相談すること、成分が不明なもの、特に外国製のサプリメントには注意しなければいけません。

2001年に国際オリンピック委員会(IOC)が行った調査では、調査した634の外国製サプリメントのなんと14.8%にタンパク同化ステロイド(筋肉増強ホルモン)が含まれていました。すなわち、プロテインなどにこっそり筋肉増強剤をまぶしてあるサプリメントがあるのです。そうすれば、「このプロテインは筋肉モリモリになる」と評判になり、売れるわけです。これらはインターネットなどでも簡単に手に入れることが出来るようですから、スポーツ選手は注意しなければいけません。

昨年度1年間に日本アンチドーピング機構(JADA)が日本国内で実施したドーピング検査数は5477件でした。選手たちはこんなにたくさんのドーピング検査を受けているのです。そのうち、ドーピング違反は5件、違反の割合は0.09%ということになりますが、これは外国に比べるときわめて低い数字です。

「スポーツはずるをしてはいけない。ドーピングというずるを許してしまうとスポーツそのものの存在が危うくなってしまう」ということを、日本の選手たちはよくわかっています。だからこそ、今回のような「うっかりドーピング」がおきないようにしなければいけないし、それを手助けするのがスポーツにかかわる我々の役割でもあります。

様々なサプリメントを摂っている選手はたくさんいますが、一番大事なことは、アンチ・ドーピングの知識を含め「正確な知識」を持ってサプリメントを摂取することです。

国立スポーツ科学センター(JISS)では、選手たちにサプリメントに関する正しい知識を持ってもらうために、ホームページにサプリメント@JISSを載せ、最新の情報を更新しています。一度ご覧ください。

スポーツ選手とTwitter

TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアが話題です。東日本大震災では安否確認だけでなく義損の呼び掛けなどでも大きな役割を果たしました。もうだいぶ前に感じてしまいますが、エジプトの政変などでもソーシャルメディアの存在が大きかったと報道されました……

★ITmediaエグゼクティブ小松裕の「スポーツドクター奮闘記」 更新!

1996年 アトランタオリンピックで有森さんと

体操NHK杯で内村航平も田中理恵も笑顔でみんな頑張ってた

代々木第一体育館で行われた体操のNHK杯に行ってきました。今日の結果で10月に東京で行われる世界選手権のメンバーが決まります。

体操というのは、もちろん力や技術も大切ですが、わずかな時間の演技をミスなく演じるために、桁外れの「集中力」が必要です。

「何度やってもしょんべんちびりそうになります」と選手は言います。まあ実際ちびった選手はいませんけどね。

「あんな棒の上でクルクル回ったり、手を放してからまた掴んだり、人間業とは思えないようなこと、よくやるねえ」

隣りで見ていた元祖月面宙返りの塚原光男さんが人ごとのように言いました。

「そうですねえ」と答えながら、あれ???、塚原さんだって昔は人間業とは思えないことたくさんやってたじゃん。

いずれにせよ、いつものチームドクターとしての仕事ではないので、気楽な観戦でした。

内村航平選手は断トツで三連覇。鶴見虹子選手も三連覇。

田中理恵選手もいつもの笑顔で頑張ってた。さらにお兄ちゃんの田中和仁選手に続き弟の田中佑典選手も世界選手権代表に決定。兄弟三人そろって世界選手権出場なんてほんとにすごい。

試合後、会場に降りて選手や支えるスタッフたちにごくろうさまって挨拶に行きました。

すると、5月の日本選手権直前にケガをしてしまい今大会も出場できなかったコナミの植松鉱治選手の姿が。今回は笑顔でサポート役。

昨年の世界選手権でも大活躍した植松選手ですが、しばらくはリハビリの日々。焦らず、しっかり治して、来年のロンドンオリンピックに向けて頑張ってね。

さて、今年10月7日から16日まで、ロンドンオリンピックの予選も兼ねた体操の世界選手権が東京で開催されます。震災や原発事故の影響で一時は開催できるか微妙でしたが、予定通り東京で開催することが正式に決まりました。

元気な日本を世界に見せる大きなチャンスです。

ぜひ、笑顔の選手たちを応援に来てくださいね。

ソフトボール金メダルの監督、斎藤春香の新たな挑戦

今日は、7月から青森県弘前市の職員として「新たな思いで地域スポーツの発展にかかわろう、スポーツの素晴らしさを伝えよう」と故郷に錦を飾ることになった北京オリンピック金メダルのソフトボール監督・斉藤春香さんのささやかな送別会でした。

金メダルを陰で支えたトレーナーの篠崎仁美さん、北京のチームドクターとして大活躍したJISSの同僚土肥美智子先生と4人で飲んで語りました。酒豪の斎藤さんに付き合い、私はもはやべろべろ状態ですが、とても楽しかった。

斎藤さんとはシドニーオリンピックの前からですから、もう10年以上になります。アトランタオリンピックではホームラン王。あと少しのところでで金メダルを逃したシドニーオリンピックでも大活躍、ベンチで一緒に大きな声を出しました。今度こそ金メダルと臨んだアテネでは銅メダルで一緒に悔しい思いをしました。そして、監督として臨み、自身4回目のオリンピックとなった北京では見事悲願の金メダル。日本中が歓喜しました。

2年前、長野で斉藤監督と一緒にソフトボール教室を手伝い、トークショーをさせていただいたことがあります。

ソフトボールが大好きで、スポーツが大好きで、それを今まで一生懸命にやってきて、素晴らしい経験ができて、そんなスポーツの楽しさを一人でも多くの子供たちに知ってほしい、と懸命に子供たちと接する斉藤監督、その姿が今でも目に焼き付いています。

だから、今回の新たな挑戦も、よく理解できるのです。

ぜひ、故郷弘前で頑張ってほしい。そして、ソフトボールを一生懸命にやる子供たちのためにも、ぜひとも再びソフトボールをオリンピック種目として復活させて、また斎藤監督と祝杯を挙げたい。

そんなことを考えながら、今日の斎藤監督との戦いに敗れ泥酔状態の私はようやくなんとか書き終えたのでした。

いつもの床屋でカリアゲに

今日はのんびり酔っぱらいながら書いています

先日書いたベイスターズの高崎健太郎、今日もいいピッチングしていたのに勝てなかった。

でも大丈夫、みんな頑張ってるのを見てる。今の調子で投げていればそのうちどんどん勝つよ。

今日の午後はいつもの床屋さんに行ってきました。

もう20年以上になります。その間、僕のカリアゲスタイルはずーっと変わりません。

3-4週間ごと通っているから、床屋のおやじは僕の頭の形を知り尽くしています、たぶん。

だから、何も言わずにあっという間にいつものように仕上がります。ついでに、いつも耳の中もそってくれます。

特殊な耳の中をそる剃刀で、チョーキモチイイ。この技術をもっている床屋さんはそうはいないんだとか。

かつて、25年ほど前に、一度だけ「美容室」に行ったことがあります。でも、なんだかんだ言いながら時間もかかって、顔もそってくれなくて、後ろ向きで優しくなでるようにシャンプーされて、こりゃあ俺は美容院はだめだなあ、って思いました。

やっぱり、スパッとバリカン使って刈り上げて、あーだこーだ言わず、シャンプーも爪を立ててごしごし洗ってくれる「職人」でなけりゃ。

ということで、今日もすっきりして、青々とした刈り上げた頭の写真を家人にとってもらおうと思ったのだけれど、「キモいからお願いだからやめて」と言われたので、床屋さんの看板の写真を載せます。

ぐるぐる回る床屋の看板も今や発光ダイオード、この青と赤は血管の静脈と動脈をあらわすものだってこと知ってますか?

床屋さんは昔は外科医だったそうな。確かに俺が大好きなこの床屋の親父も外科医になったらきっといい手術するだろうなあ、といつも感じるのです。

スポーツ貧血と立ちくらみ

毎日スポーツ選手のメディカルチェックが続きます。

スポーツ選手は激しいトレーニングによって血液のもととなる「鉄分」が失われやすいため、貧血になりやすくこれを「スポーツ貧血」と呼ぶこともあります。

貧血は医学的には「血液中のヘモグロビン濃度が低下した状態」のことですが、それにより赤血球の酸素運搬能力が低下するため、パフォーマンスとくに持久的能力に直接影響します。ですから、スポーツ選手は症状のあるなしにかかわらず定期的に血液検査でチェックしなければいけません。症状が出る前に貧血がないか、鉄欠乏状態がないかなど、ヘモグロビン、血清鉄、フェリチンなどの値を調べるのです。

今までに貧血と診断されたことのある選手は再び貧血になることが多いので、問診では必ず「今まで貧血と診断されたことがありますか」と聞きます。

そこでよくある答えが、「立ちくらみがよくおきて貧血じゃないかと言われました」という答え。

小学校の朝礼などで子供たちがよく倒れることがありますが、それを「脳貧血」と呼ぶことがあるので混同されがちですが、立ちくらみと貧血は医学的には違います。

貧血はヘモグロビン濃度が下がり血液が薄くなること、立ちくらみは自律神経が不安定になり頭の血圧を維持できなくなること、すなわち「自律神経発作」です。

人間は寝ている状態から急に起き上がると、重力によって頭の血圧が低下するはずですが、自律神経の働き(交感神経と副交感神経)によってそうならないような仕組みを持っています。

それがうまくいかなくなったのが立ちくらみ、子供は自律神経が不安定なのでそのような症状がよくおこります。「車に酔いやすい」、「遠足の前におなかが痛くなる」、「お風呂ですぐのぼせる」など誰もが経験のある症状もその仕組みは同じです。心臓や血圧だけでなく腸の動きも自律神経が深くかかわっているからです。

そんな症状は大人でも時々おきますが、日々ストレスにさらされているトップアスリートでもよく起ります。

「試合の前になると心臓がドキドキする」、「立ちくらみが頻繁に起こる」、「試合前におなかが痛くなったり、すぐに下痢をする」、「ぐっすり眠れない」などなど、心配になればなるほどそれらの自律神経症状は悪くなります。

こんなときに一番大事なことは、何が体の中で起きているのかを理解すること、それだけで、不安がなくなって症状が軽くなります。「オリンピックのメダリストだってこんな症状になることあるんだよ」って聞いて、安心してよくなる選手も多いのです。