結果がすべてか?

こんにちは、セクレタリーKです。みなさま、GWはいかがお過ごしでしょうか? イギリスロンドンで開催される、夏季オリンピックがいよいよ近づいてきました。開催期間は、7月12日から8月12日まで、大会に向けて選手たちは、今日もトレーニングを続けているはずです。そして、今回は第30回の記念すべき大会。大いに盛り上がることでしょう。イギリスはちょうどサマータイムの時期なので、日本との時差は8時間遅れになります。寝不足が心配ですが、日本選手の活躍を応援したいです。そして、小松先生も日本選手の活躍を陰で支え続ているひとり。今回から数回に亘り、過去の帯同エッセイをご紹介していきます。「スポーツドクター」のエッセイで、みなさんも当時の熱くなった試合を思い出してください。

2006年7月「e-resident」掲載~第1回ワールド・ベースボール・クラッシック

―世界一を経験して

今年の3月、チームドクターとして帯同したワールド・ベースボール・クラッシック(WBC、よく考えたらWBCといえばといえば普通「白血球(White Blood Cell Count)」ですよね)で、我が王JAPANは見事初代世界一に!私自身それまで世界一を目指した舞台を3回経験させていただいていますが、初めて世界一のチームの一員になることができました。

最初は、1996年、野球チームに帯同したアトランタオリンピック、一度は同点に追いついたものの最後はキューバの底力で引き離され銀メダル。次は2000年のシドニーオリンピックのソフトボール、熱戦の末アメリカに延長さよなら負けした瞬間をベンチから呆然と眺めました。そして、2004年のアテネオリンピック、今度こそアメリカを倒して金メダルと臨んだソフトボールチーム、オーストラリアに破れ決勝に進めなくなった…。ベンチ裏での宇津木監督の涙、今でも目に焼きついています。何より私自身のアテネでの悔しさ、「もっと何かしてあげられなかったのか」という思いが、スポーツ医学の世界に身をおこうと本気で考えるきっかけとなりました。

今回、初めて世界一を経験し、一番感じたことは「やはり結果が大事なんだなあ」ということ。二次リーグで韓国に負け皆でやけ酒をあおった翌日、もしメキシコがアメリカに負けていたら帰路に着くことになっていました。そうなっていたら、おそらくマスコミからもぼろくそに言われていたことでしょう。それまでの過程がまったく同じでも、結果次第で評価される世界であることを痛感したわけです。もちろん、監督、選手たち、スタッフ皆が世界一になるためにがんばっていたし、準決勝、決勝の戦いもすばらしかった。ただ、チームとしてはいくつかの問題点もあったと思います。私自身も反省すべきこともあります。しかし、優勝によってすべて帳消しに。「がんばってやっていたこと」いう過程ではなく、「がんばってやって、しかも世界一になった」という結果が評価され、その事が人々に感動を与えたのです。この「結果がすべて」という事に関しては、私自身素直に納得できない気持ちもありますが、やはりスポーツの世界では結果を出さなければいけないという事がよくわかりました。だから、多くの選手たちが苦しんで、苦労しているのです。

―結果を出すために

当時、その1年前まで私は胆膵疾患を専門とする消化器内科医でした。胆膵疾患の中でも「膵臓がん」はいまだに難治性の癌として有名です。これだけ画像医学が進歩しても、早期に発見できて手術できたと思っても、いまだに5年生存率は限りなくゼロに近い。すなわち「完治する」という結果が出せない病気です。多くの膵臓がんの患者さんを診てきましたが、完治するという結果が出せたのは数人。それでも、痛みをとる、不安をとる、少しでも長く家族と過ごせる、といった結果を出していたような気はするけれど、やはり、「がんばって治療しました」じゃあだめで、「完治する」という結果を出さなければ、結局患者さんは満足していなかったのかもしれません。でも、緩和治療もとても大事だし、完治できなくても、がんばって治療したということを多くの患者さんやそのご家族は評価してくれたようにも思うし、あー、書きながら自分でもわからなくなってきちゃった。まあ、消化器を無責任に離れてしまった私にそんなことを語る資格はないか。

いずれにせよ、どの世界も結果を出すということを目標に努力しなければいけない、ということなんでしょうね。私も、選手たちが世界の舞台で勝つという結果を出すために、陰でスポーツ選手を支える力になりたいと思います。まだまだこの世界は人材不足です。「スポーツを支える」仲間をもっともっと増やすために、これから若い研修医、学生諸君にこの世界のことを宣伝していきたいと思います。