もうすぐ北京オリンピック

2008年8月「e-resident」掲載~カナダバンクーバー、サレー・「女子ソフトボールカナダカップ」

―北京オリンピックまであとわずか

本当に4年間はあっという間です。

7月は、女子ソフトボールに帯同して、カナダに行ってきました。バンクーバーの近くのサレーで開催された「カナダカップ」に、オリンピック前の最終調整を兼ねて全日本チームが参加しました。この大会は毎年開催されるのですが、世界中からナショナルチームやクラブチームが出場します。今回は、オーストラリア、カナダ、チェコなどのナショナルチームが来ていました。

選手たちはみな体調もよく、爽やかな気候の中で、のびのびとプレーしていました。アテネオリンピックでは、オーストラリアに二回敗れ、惜しくも銅メダルでしたが、今大会では、そのアーストラリアを二回とも退け、見事優勝を飾りました。

 

残念ながらロンドンではオリンピック競技から外されてしまったソフトボールですが、今回北京では斉藤春香監督が指揮をとります。

斉藤監督は、アトランタ、シドニー、アテネと3回のオリンピックに選手として出場しました。アトランタオリンピックではホームラン王にも輝いています。青森県の出身ですが、いかにも東北人らしい、まじめで、黙々と仕事をするタイプです。

もう長い付き合いになりますが、特に思い出深いのは、シドニーオリンピックの時、ベンチ前で二人並んでひたすら大きな声を出しまくったこと、いわゆる、「声作戦」の思い出です。

「コマッチャン、あんた何のためにベンチに入るか解ってるんでしょうね」

シドニーオリンピックで宇津木監督にいわれました。「ベンチに入るからには、チームの一員として、何でもやりなさいよ。声もしっかり出しなさいよ。」というわけです。命令どおり、ベンチから大きな声を出していると、宇津木監督は、今度は選手たちに言います。

「お前らー、小松先生より声が小さいじゃあねえかー」

つまり、初めからそれを狙っているわけです。さすが宇津木監督です。

―声出し作戦

ソフトボールの場合、そもそも登録できる選手が少なく、守備についているときはベンチには数人しか残らないことになります。斉藤監督は指名打者なので守備につきません。ですから、「先生、そろそろ「声作戦」行きますよ」との合図で、いつも並んで声を出していました。

とくに、予選でアメリカを破った試合のことはよく覚えています、毎回ピンチの連続でしたが、耐えて耐えて、ついに公式戦対アメリカ初勝利を手にしました。

ソフトボールの場合、球場が狭いので、ベンチの声が打者によく聞こえます。「ガンバレー」「大丈夫だぞー」とひたすら大きな声を出し続けることによって、打者の集中力をかき乱すのです。斉藤監督の話によれば、その後の世界大会でアメリカがまったく同じことをやってきたそうです。アメリカの選手と話をしてみると、「シドニーであれをやられて本当に嫌だった」とのこと、「声作戦」はそれなりの効果があったようです。そう考えると、自分も少しはメダル獲得に貢献できたのかなあ、とうれしくなったりもします。

今回の遠征で一番感じたことは、「斉藤監督の存在感」でした。もともと優しい性格の監督が、時には厳しく叱り、時にはしゃべりかけづらい雰囲気も醸し出し、それでいて、普段通りの優しさも感じる。頃合いの良い存在感、距離感がとてもうまくチームをまとめているように思いました。

今度こそ、宿敵アメリカを破って、金メダルを手に帰ってきてくれるような気がします。

さて、そのカナダカップが開催されたサレーですが、「ソフトボールシティ」ともよばれ、みんなソフトボールが大好きで、親しんでいます。地元のカナダチームが残れなかった決勝戦でも、あふれんばかりの観客が集まり、勝ち負けに関係なく素晴らしいプレーに拍手を送ります。ボランティアの方や、ホストファミリーの人たちもとても優しくしてくれました。会場には、4面のソフトボール場があり、国際大会と並行して、障害者のソフトボール大会も行われていましたが、本当に「みんながソフトボールを楽しんでいる」という雰囲気でした。いつも、「スポーツに親しむためのしくみ作り」が大事だ、と叫んでいる私にとっても、大変参考になる大会でした。

先日は、北京オリンピックの日本選手団結団式が行われ、いよいよ本番モードです。わたしは、今回は星野ジャパンのチームドクターとして、日本での合宿から大会期期間すべて帯同する予定です。みんなが、最高のコンディションで試合に臨み、力を発揮できるように、力を尽くしてきたいと思います。