日本を元気にする

2009年4月「e-resident」掲載~第2回のワールドベースボールクラッシック(WBC)

―大きな感動は人を動かす

第2回のワールドベースボールクラッシック(WBC)、侍ジャパンは見事二連覇という結果で幕を閉じました。それにしても素晴らしい、劇的な優勝でした。

3年前の大会では、チームドクターとして決勝戦まで帯同し、優勝して紙吹雪舞うペトコパークに立つという貴重な経験をさせていただきましたが、今回は、宮崎で行われた代表合宿から東京ドームでのアジアラウンドまで帯同しました。アメリカにはついて行かなかったので、日本で気楽にテレビの前で応援しました。オリンピックの時など、いつも現地でチームと一緒なので、久しぶりに「日本での雰囲気や盛り上がり」を感じることができました。

3年前、2次予選でアメリカ、韓国に敗れ、もう日本に帰る用意でサンディエゴに移動した日、アメリカがメキシコに敗れた瞬間、みんなが部屋から飛び出してきて大騒ぎでハイタッチをしたことを思い出します。この純粋さ、一生懸命さがどれくらいテレビで伝わってくるのだろう、という目でも見ました。そして、テレビから伝わってくる選手たちの姿は、私が知っている選手たちそのものでした。

準決勝のアメリカ戦で大活躍したムネリン、川崎宗則選手の言葉にも感動しました。

「アジアラウンドの時から、ベンチですべて試合に出ていました」

彼は、ベンチで本当にいつも大きな声を出していました。彼の声はベンチだけでなく、ベンチ裏まで響き渡る程に。いつ呼ばれてもすぐに出られるように準備をしていました。スタメンで試合に出られなくても決してくさることなく、チームの中で自分の役割を理解し、一生懸命。彼のあの感動的な言葉は、決してマスコミや国民を意識して出た言葉ではなく、ありのままの彼の気持ちが言葉に出たものです。私が知っている川崎宗則そのものでした。

もしこれを読んでいる研修医の方たちは、「せっかくこの病院に研修に来たのに症例も少ないし指導医もきちんと教えてくれない」とか、「あー、やっぱり違う科を選べばよかった」とか、そんなことを思ったら、ムネリンの言葉を思い出してほしい。よくても悪くても、与えられた場所や環境でしっかり頑張っていたら必ず誰かが見てくれています。必ず、よかった、と思う時がきます。

イチロー選手の、ドーピング検査に関する発言、「最後にドーピング検査にあたってさらに疲れた」とか「またドーピング検査に当たっちゃった」なども、よかったと思います。

あれで、多くの人が、「WBCでもドーピング検査を行っているんだ」と認識したと思いますし、このエッセイで何度も書いてきたように、「日本のプロ野球選手はクリーンなんだ」という証明にもなりました。

今回日本にいて、「日本中がこんなに盛り上がって、普段野球をあまり見ない人でも話題にして、優勝してさらに大騒ぎだった」ことを肌で感じることができました。

「スポーツが日本を元気にする」ことを実感しました。

日本の様々なスポーツが強くなって、一流選手のプレイや頑張る姿を見て皆が感動して、スポーツに親しみを感じて、体を動かすようになって、仲間が増えて生きがいも持てて、大きな声であいさつをするようになって、生活習慣病も減って医療費も減って、地域も活性化して、みんなが楽しくなって、元気になって、それが私のめざすべき道なのだ、とあらためて感じました。

「そうだ、日本を元気にするためにまだまだ頑張るぞ」